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スマホアプリ「コインパズル」開発者の日記https://bit.ly/35gpWAB

回顧録1〜トキワ荘プロジェクトへ入居〜

人生も半分過ぎ、いつ死んでもおかしくないので、回顧録など。
高校時代は真面目で、大学時代はややデビューに成功し、ただの調子に乗った若者だったので読むに足らんかと思い、少し苦労をし始めた大学卒業後から。
 
私は大学4年になってすぐ、就活を辞めた。
人生楽をしようと思って、誰でも受かる院試を受けたが、問題用紙の裏を完全に解き忘れ、落ちた。
しかし凹むどころか、自信に満ちあふれていた。
大学時代は映画を作ったり、デザイン学科に所属していたりしただけで、オレはクリエイティブなんだと謎の自身に満ち溢れていた。
 

 

 
しかしそんな私でも、映画の道はイバラの道に思えた。
映画美学校の友人には、映画制作で借金を負っている人間が結構いたからだ。
友人の一人は100万程度の借金、と言っていたが、バイトで月5万くらいしか稼いでいなかった自分にとっては、途方も無い金額に思えた。
とにかく借金は怖いと思った。
 
そこで選んだ道は、もう一つの夢、漫画である。
漫画は極めて安いコストで作る事ができる。
バットを短く持って、とにかく出塁しようと思った。
 
そこで、大学の卒業論文と並行して漫画を描き始めた。
当時の「世界の外側に出る」と言う訳の分らないパワーワードに取り憑かれていて、とにかく「世界の外側に出る」を具現化する漫画を描こうと思った。
「アンチユーグリッドワールド」と言うタイトルの漫画を描いた。
ストーリーはと言うと、過去に戻った主人公が、過去で自分が取っていない行動を取る事で、世界秩序が崩壊し、世界の外側に出られると言う荒唐無稽なものだ。
 
その漫画を描きながら気付いた事は、「漫画は孤独」と言う事だ。
1週間くらい1人で漫画を描いていると、頭がおかしくなって来るので、「これは仲間がいないとキツい」と思った。
私は孤独に弱かったのであった。
 
ぼんやりと、この広い世界には漫画家が集まっている住居があるのではないか、と言う事を思った。
ネットで調べてみると「トキワ荘プロジェクト」と言うものが存在し、ちょうど男子寮の募集を始めたところだった。
周囲に話すと、「怪しいから辞めろ」と言われたが、全部無視した。
 
 
私は意気揚々と大学のある西千葉から、西部池袋線の富士見台と言う駅まで行き、面談を受けた。
M氏と言う優しい男性が対応してくれて、家を案内してくれた。
私がトキワ荘プロジェクトで男子寮での問い合わせ一号生らしい。
一軒家で部屋は5部屋あり、私は一階の一番広い部屋を選んだ。
家賃は52000円で光熱費ネット代無料、と言う事だったが、「漫画家が住む」と銘打つほど安くはない。
電車が走る度に家が揺れ、日当たりが悪くジメジメしていた。
そんな事実は当時の自分の視野の外側にあったため、即書面にサインする事にした。
畳に書面を広げ、その上で書面に直書きした。
 
M氏は後になって、「畳の上で文字を書く、ヤバい人が来た」と思ったと語っていた。
私は、大卒という肩書きを捨て、夢に走る自分に酔っていた。