コインパズルを作ってもう2年くらいになります。
ようやく次のアプリを作ろうかな、と思い、長年の夢であった「BlueNote2」の進化版をリリースすることができました。
このアプリの構想は10年くらいあって、漸く技術が追いついたかな、と言う感じです。
制作に入ってしまえば、2週間で出来てしまいました。
もちろん、まだまだ改良の余地は大量にあり、そのうちアップデートして行こうかな、と言う感じではありますが。
さて、どんなアプリかと言いますと。
バイオリンの様に音のグラデーションができる楽器である、と言うことです。
ピアノには絶対出せない音があります。
ドとシの間の周波数の音は絶対に出せません。
そこに鍵盤は存在しないのだから。
だから、そのギャップを埋める事が出来れば新しい音楽を生み出せるはずだ、と言う思いからこのアプリは始まっています。
今回のアプリ「MusicisMath」の前身「BlueNote2」ではひとまず押した場所でドとシのギャップを埋める音を作る事には成功しました。
しかし、チョーキング(音をシームレスに高くしたり低くしたりする事)が出来なかったんですね。
今回、iPhoneアプリの開発言語SwiftではなくスマホアプリならOSを問わず何でも作れるUnityなるソフトのC#と言うプログラミング言語を使った事で、チョーキングが出来る様になりました。恐らくSwiftでも可能なのでしょうが、私の技術不足でした。
このチョーキング、と言う壁を突破出来た事が今回のアプリの完成に至っています。
こんな感じでチョーキングできます。
さっきからチョーキング、チョーキングと言っていますが、チョーキングだけならバイオリンで出来るし、ギターでも範囲付きならばできると思われるかもしれません。
フレットが無いので、ドとシの間の音は出せるはずです。
そうではないのです。
バイオリンは弓で演奏しますので、一つの音を出した時、弓が当たらない場所との組み合わせになる和音は出せません。
つまり、例えばCMajと言う音の関係性を保ったまま、DMajに音をグラデーションさせる事は私の知る限り出来ない筈です。
ではコンピューターを使えば出来るであろうと。
そうですね。コンピューターを使えば勿論出来ます。
しかし、それは「感覚的」な行為でしょうか。
誰もが簡単に出来る事でしょうか。
それなりに詳しい知識を持った人のみに、しかも感覚的では無い形で許される行為でしょう。
そう、この楽器の一つのコンセプトは「CMaj(ドミソ)を感覚的にDMaj(レファ#ラ)にグラデーション的に移行させる」事です。
こんな感じの事です。
さらにCMaj(ドミソ)の周波数比をご存知でしょうか。
4:5:6です。
DMaj(レファ#ラ)も4:5:6ですし、Majと付く音は全てそうです。
4:5:6と言う数字の比は美しいですし、視覚的に見せるとなると、それは三角形でしょう。
そう考えると全ての和音は幾何学的な図形で表せることになります。
例えばMaj7(ドミソシ)ですと4和音ですので、四角形でしょう。
ピアノもギターもバイオリンも最終的には弦を弾くことでその長さに反比例して高さが出ますし、管楽器も管内の気柱の長さに反比例して出ます。
つまり、全ての音は「長さに反比例して高い音が出る」のです。
言い換えると「長い線は低い音を出し、短い線は高い音を出す」のです。
ですから、4:5:6の音を出すにはこの逆数1/4:1/5/:1/6の長さを作る必要があります。
この1/4:1/5/:1/6と言う比は非常に分かりにくいので分母の最小公倍数をかけて、15:12:10とし、この整数比を持つ三角形アプリ内で作り、これをMajコードとして表すとしました。
その三角形の頂点をドラッグすると、音がシームレスに高くなったり、低くなったりすると面白いのではないかと。
ここで苦労がありました。
一つの頂点は固定し、もう一つの頂点を手で動かすともう一つの頂点は自動で動いてくれないと、Majコードはキープできません。
これには私の世代は高校で習っていた「回転行列」の考え方を使って割り出しました。
大人になったら数学なんか使わない、と言ったのはどこの誰なんでしょう。。
そんな作り方の話は置いておいて、話はCMaj(ドミソ)からCMaj7(ドミソシ)に移ります。
CMajは3和音ですが、CMaj7は4和音ですから、四角形で表すことになります。
しかし、四角形と言うのは対角線を入れると6本の線が引けるんですよね。
多分6和音全てハモらせる事は難しいだろうから、せめて5和音をハモらせようと。
そうなると作るべきはMaj7add9(ドミソシレ)ですよね。
この場合、問題点がありました。ドミソシレのレを1オクターブ上のレで取ってしまうと、ドミソの三角形は既に作っていますから、ドシレと言う比率を作ることになり、この比が三角形の成立条件に反してしまい(二辺の和が他の一辺より短くなってしまう)三角形が作れないんですよね。
ですから、ドレシと言う風に低い方の音を出す事で三角形の成立条件を満たす事にしました。
これでドレシの音を出す三角形をドミソの逆側(ドの辺は共通)に作る事が出来ました。
そうすると、さらなる欲が出てきます。
「あれ、もう一個対角線が引けるよな」と。
ココを繋ぐとハモるんではなかろうか。
コレをやってみると、ハモるんですね。見事に。
このコードを当アプリのオリジナルコード(Maj7add9+α)としました。
さらに、この図形ドミソと逆側の三角形を逆向きにする事でも5辺については同じ整数比をキープ出来ますが、最後の一辺の対角線の長さは変わってきます。
さあ、コレもハモって欲しい。
ドヤー。
これをMaj7add9+βとしました。
Maj7add9+αとMaj7add9+βを交互にやると割と曲になりそうです。
この要領で知りうる限り全てのコード(和音)をアプリに搭載しました。
Maj,min,Maj7,min7,aug,dim,6,7,etc...
ギターの知識をお持ちの方はCMajとかじゃないの?Majだけってどう言う事?と思われるかもしれませんが、そうではありません。
このアプリは三角形の一辺を自由に変える事でCMajであり、DMajであり、自由に全てのMajコードを出す事ができるのです。
これらのコードの音の周波数比を計算していくとふと、有名どころのコードを全て試してもまだ試していない整数比がある事に気づきました。
まず1:2:3。
これは無意味なコードです。1:2は上のオクターブのドと下のド の和音ですから、コードとは呼べません。これにさらに上のソを足す事になります。
まあ、和音と言えば和音ですが、ギターではパワーコードに分類されるもので、もちろんこれはアプリで再現できます。
まずMajボタンでMajコードを作り、ChordFreeボタンで単音編集を可能にして、アプリ画面上部の「2」ボタンを押しドとソの音を作ればOKです。
同時に整数倍の2:4:6もアウトです。
つまり、整数倍すると同じになるものはアウトとなって来るのです。
そもそもこの比は三角形の成立条件に反していますし。
2:3:4も「ドソド」であり、パワーコードです。
ここで意味を持つ数字。
数学が得意な方はお気づきでしょう。
「素数!!!!!もっと言うと互いに素な整数比!!!」
です。
これ以上簡単に出来ない整数比を持っている事になり、オリジナルな響きを提供してくれる筈です。
次に思いつく整数比は3:4:5。
やってみました。
これは美しい!!素晴らしい!!理論と結果が一致した!!マーベラス!!
何故人類はこんな簡単で美しい響きに気づかなかったんだ!?
と思ったのですが、色々調べた結果、これは「ファラド」と同じ構成だと気づきました。
つまり、F#ですね。
もっと言うと、Majコードの展開型であります。
うーん。残念。
しかし、良い響きだったので、ボタンとして残す事にしました。
3:4:7,2:3:5,2:3:7とかもありですが、三角形が作れません。
と言う事で3,5,7と言うコードを作ってみました。
これはダメでした。。
ここで、ハモったコードとそうではないコードの違いを考えると、ハモったコードは最小公倍数が60になるのではないか、と言う推論が生まれました。
3:4:5、4:5:6(Maj)、10:12:15(min)など、全てそうですよね。
では、まだ試していないものは?
12:15:20。コレだと試すと、まぁまぁ。
これをオリジナルコード「121520」としボタンを作りましたが、もしかしたらあるのかもしれません。
もしかしたら響き的にminの展開系かも?
私は個人的には、まだ人類が見つけていないコードがある気がします。
それは意外にも滅茶苦茶な整数比かもしれません。
しかし後から調べると「1:π」とかになっているのかもしれません。
ちなみに1:√2はだめぽでした。
このアプリにはChordFreeと言って、自分が好きな和音を自由に作れる機能があります。
是非、このアプリを使ってまだ人類が見つけ出していない、あなただけの響きを見つけてみて欲しいのです。
美しい響きが見つかったその際は是非、スクショをして、図形を記録し、再現可能にしてみるのを忘れないでください。
僕には、「美しい何か」は共通のものとして存在し、それにどうアプローチするか、が皆違うので「美術」「音楽」などと言うジャンルが存在すると言う思いがありました。
美しい何かって、共通しているよね、アプローチ方法が違うだけだよね、そんな事を伝えたくて、音を視覚的に見る、と言う試みに挑戦してみようと思った気がします。
ドとシの中間の音を出す、と言う狙いと、音を視覚的に見ると言うアイデアが相まってこの様な形になりました。
長くなりました。
バーイ!(春日風)
あ、このアプリで私が作った曲です。
このアプリの名前はBords of Canadaのアルバムから頂きました。
そのBords of Canadaを意識して作った曲でもあります。
聞いてください、ShortHope!