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スマホアプリ「コインパズル」開発者の日記https://bit.ly/35gpWAB

悪人

悪人、Tジョイ大泉と言う駅からとても遠い、郊外型のシネプレックスで見てきました。
裏に東映の撮影所があって、映画を見る前から、映画な気分に浸れます。
駅から遠いのは、この撮影所の側にあるからですよね。
映画関係社が、このTジョイ大泉に入って、客の入りとか、チェックしてるんだと思います。
だけどこの利便性の悪さは、客足を遠ざけ、「客入ってねーな」ってなって、映画関係者のモチベーションを逆に下げてしまうんじゃ。。


さてさて映画の方は
もはや日本の巨匠になりつつある、李相日監督の新作。
相変わらずいい映画でした。
ただ、先に一言言わせて頂きますと、この映画、本当は絶対ルックス的に恵まれない人たちの話だと思うんですよね。
メジャー映画の弱点は、興行的にスターを出さなければならないので、絶対ルックス的に美しい人を出さなければなりません。
それにより損なわれるリアリティーとか、どん詰まり感というか、やはりあると思いますね。
まぁ、そんなにどん詰まった映画を見たい人間なんて、ごく少数だと思うのですが。
でも、殺人を起こす様な人たちのどん詰まり感って、それほどどうしようも無い物だと、思ってしまいます。


話しは長崎県、福岡県、佐賀県と言う正にボクの生まれ育った近辺を舞台にした話。
方言に若干の懐かしさを感じました。
そして地方独特の侘しさを感じました。



以下ネタバレ











「1人の女が殺され、犯人が他の女と逃走する」
お世話になっている映画監督の先輩に習った映画を一言で言う方法(テーマ)で言うとそれだけの映画なんですが
そこにいろいろな感情や、事件、様々な事があっただろうなぁ、と想像しながら脚本が出来ていったんだと思います。
当然男女二人の逃走劇ですから、どん詰まりの中でこそ輝く美しい愛とか、逃げる途中の美しい風景とか、そういうものは過不足なくバッチリ描かれています。
しかし、見せたいのはそこではありませんから、この映画のメッセージは「ニュースの裏側」ですから、そのシーンが美しいと語りぐさになる事は無いんでしょう。
個人的には、こういう「ギリギリの愛」みたいなのは、いつか作品化してみたいです。


さてはて、この映画のテーマである「ニュースの裏側」とは。
そもそもニュースで報じられる1つの殺人事件って、実は凄く奥行きがあっていろいろ犯人に肩入れしたくなる出来事とか、本当はいろんな事があると思うんです。
李監督は、ニュースを見るにつけ、そんなニュースの裏側を感じ取り、こんな映画を作りたくなったんじゃないでしょうか。
皆さんもそう言う部分、感じて下さいね、っていうか


この映画にも、沢山のマスコミの人が殺人犯の祖母の家に押し掛けます。
口々に「あなたのお孫さんは人を殺したんですよ。何か答えて下さい!」
と心ない罵声を浴びせる訳です。
いつもワイドショーで見かける、アレです。


ボクは週刊誌のゴシップ記者とか、ホント辞めて欲しいな、って思ってる。
それが無きゃ喰っていけない訳ない、ちょっと給料は下がっても、その仕事辞めればいいじゃん、それがモラルだろ?
って思うんですよ。。
昔N○Kでバイトをしていた時、千葉の行徳の警察署で殺人犯が捕まってそこにやって来る、と言う事になり、随分たくさんのマスコミの人がその警察署の前にたむろしていた時の事を思い出しました。
その時はボク自身、お恥ずかしながら仕事に必死で、何も考えませんでしたが。。


友達にマスコミ関係者がいます。
彼と飲んだ時
「殺人事件の加害者側の家族の言い分というか、そういうのをテーマにした特集をやりたい。でもダメだったんだよ」
と言っていて、内部にいながらそう言う発想を持つ彼に尊敬の念を感じつつ、ボクは是非やって欲しいと思いました。
ダメなのは当然と言えば当然で、マスコミは自分に刃を向ける様な事はしないんでしょう。。
しかし、みんなが多様な視点を持てる様に是非そういうこと、やって欲しいな、って思う
と言う事で、カズタカ君、宜しくお願いします。


ただ、この映画で個人的に一番心に残ったのは、そこじゃありませんでした。。
柄本明さん演じる殺された女の父親が見ず知らずの若者に向けて放った一言
「最近は大切なモノが無いヤツが多過ぎる。大切なモノがないから、失う物が無いから、強くなったと勘違いする。。お前は大切な人が笑顔でいてくれることに喜びをかんじたことがあるか?」


そんな事言われたら、分かんないよ。分かんない。
正直な話、自分は強いって思ってるけど、それは失う物がないからなのかな
最近結局、一人で生きて行かなきゃいけないんだから、大切な人なんて、ホントにいるかって、考えちゃうよ
オレにも、何人か、いるかなぁ。いないのかなぁって
いるって信じたい。信じとるよ。みんな!!
キレイ事じゃないって自分を信じたいです


こんな作品を作る李監督って、映画の才能って言う枠を超えて素晴らしい人ですよね
ゴダールとか、キューブリックとか、純粋に映画を撮る監督も素晴らしいけど、社会に物申す監督も素晴らしい
映画監督の仕事の一環かも