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愛と幻想のファシズム

愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫)

愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫)

愛と幻想のファシズム(下) (講談社文庫)

愛と幻想のファシズム(下) (講談社文庫)

ネタバレ




























仕事場の方に勧められて読んだ。
結構小説の中では、人生で最も感銘を受けた一つ、に入る小説だと思った。。


私の中では「アフリカでは今も子供が餓死んでるのに、ヒューマニズムなんて存在するのか?」と言う問題に向き合った小説だと思う。
結局、「優しさ」なんて、ただの欺瞞だと、思う。
私が誰かに優しくしたのは、結局気まぐれ、または真実の忘却であって、本当の優しさじゃない。
それは全ての人間に言える事だと、個人的に思う。
本当の意味での視野の広さを持った人間ならば。
また、もっと視野を広げれば「豚を育てて殺して喰っていいのか?」と言う疑問にもぶちあたる。


東北地方で、今も困っている人は沢山居るし、その人たちを助けに行く事は素晴らしい。
だけど、そんな人たちと同じ様な人々が、震災が起きるずっと前からアフリカには居る訳だ。
私たちはその事実に日々、蓋をして、生きている。
もちろん私も。
これからも蓋をしたまま生きて行くだろうし、私の実力ではそうせざるを得ない。
特攻精神を持って突っ込んでもいいかもしれないが、正直、もっとやりたい事がある。


この本の立場は身体に生涯を持った人間は、人間として不完全で死ぬべきである、と言う恐るべきもの。
しかし、アフリカで餓死する人を無視するならば、それは全うな事である。
身体に障害を持った人を生かす事と、アフリカで餓死する人を無視する事は矛盾している。
世の中はこんな矛盾で満ちている。
私たちの世代はそんな世界の矛盾を小さい頃からメディアで知らされつつも、無視せざるを得ない。
私自身、矛盾を諦めている。
そんな諦めを繰り返す事で、少しずつ私達は「草食」と呼ばれる様になったのかもしれない。


この小説はある種「予言の書」的な側面を持っていると言わざるを得ない。
まず、国家ではなく「ザ・セブン」なる企業共同体が世界を支配している点。
これは、前に読んだジャック・アタリ氏の「21世紀の歴史」の中でも言われている事であるが、これからは企業が世界を支配して行くだろうと言う村上氏なりの予言だろう。
実際、最近は中国とグーグルが戦ってたりして、これぞまさにと言う感じだろう。


また、現代の日本も、この小説の描く、パニック的状況に近づきつつある気もする。
日本政府がこの小説程ひ弱かは疑問だが、繰り返される首相の交代劇で、政治がズタズタになっていっているのは、誰の目にも明らかだろう。
さらに、この小説で繰り返されるクーデターや政治の陰謀劇が実際に世の中で起きているとしたら、今も誰かの描いたストーリーに世界は乗っかっている事になる。
911もホントの所はどうなんだろーなーとか、ビンラディン暗殺劇はどうなんだろーとか、思ってしまう。


私自身だって、弱肉強食の世界でサバイブしてかなきゃならんと思ったし、逆にヒューマニズムとか言ってないで、それでいいんじゃないか、そうするしかねーだろ、と言う諦めが付いた小説だった。